2012年11月6日火曜日

小倉三部作

 小倉日記は、基本的に事実の羅列であり、私などは最初から最後まで通読しようという気にはならない。ところどころ気になるところを拾うという感じにどうしてもなる。当然読んでいて引き込まれるというような読み物でもない。

 そんな愛想のない日記に幾ばくかの色を添えてくれるのが、小倉を舞台とした三つの小説、『鶏』『独身』『二人の友』である。小倉を離れ、鴎外が医務局長というトップに就任した後、一気に文章を発表し始めるのだが、その頃になって書いた小品である。

 小説であるから当然フィクションが入っているだろうが、鴎外の日常、小倉の町の雰囲気、人間模様、習慣などを垣間見ることができるように思われる。これらの小説を読んだ後に小倉日記を眺めると、そこに少し血が通うように感じられるのである。

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